ARC OF A DIVER
Steve Winwood
Side A
01. While You See A Chance
02. Arc Of A Diver
03. Second Hand Woman
04. Slowdown Sundown
Side B
05. Spanish Dancer
06. Night Train
07. Dust
Producer : Steve Winwood
Engineer : Steve Winwood
Cover Designer : Tony Wright
Musician : Steve Winwood (vo,syn,g,key,b)
Recording : 1979 -80 (Netherturkdonic Studio, England)
Release : Dec.1980 (Island ILPS 9576 / UK)
アルバムについて
スティーヴ・ウィンウッド初のソロアルバムは味わい深い佳作ではあったが、商業的に成功したとはいえず厳しい立場に置かれていたようだ。スティーヴはこの頃を振り返り「あの時期は本当に苦境に立たされていた。だから自分自身に言い聞かせたんだ。もう1枚だけ渾身の力を込めてアルバムを作り、それで成果を出せなければあきらめよう」と語っている。このような決意をもって制作されたソロ第2弾だったが、結果的にはスティーヴに幸運の女神がほほえんだ。本作は世界的にベストセラーを記録しスティーヴのキャリアを代表する傑作となったのである。
さらに特筆すべき点は、本作をスティーヴ・ウィンウッドがまったく一人で作り上げたということ。唯一作詞に関してはウィル・ジェニングスらの協力を仰いでいるが、作曲と全ての楽器の演奏、プロデュース、それにエンジニアリングなどは全て自身が担当している。さらに英国グロースターシャにある広大な土地に自宅スタジオを所有するスティーヴは、録音場所さえもセルフサポートできた。まさに文字通りの 「ソロ」アルバムといえる。
アルバムの制作には約2年もの歳月を費やしたという。それはたった一人の地道な作業だったということもあるが、それ以上にスティーヴ・ウィンウッドの最後の挑戦であり、納得できるまでやり尽くすという決意が完璧主義的な方向に導いたのだろう。レコード会社のスタッフは、自宅の地下スタジオに一人引き籠もったスティーヴを見て「ついに気が狂った!」と思ったらしく、「そんなことはやめたほうがいい」と助言する人もいたという。
しかし初心を貫徹したスティーヴ・ウィンウッドは、このアルバムにおいてめでたくソロミュージシャンとしての本格的なスタートを切ることができた。これが売れなかったら引退していたかも知れないと考えると、ファンとしては大げさではなくその成功を神に感謝したい。なぜならスティーヴは、ソロとしてこれからさらに大きく花開くミュージシャンであり、生まれ持っての才能をこの時点で放棄してしまうにはあまりにも早すぎるからだ。
収録曲について
While You See A Chance
(S.Winwood / W.Jennings) 5:13
シングルヒットを記録したこの曲は本作を代表するナンバー。一度聴いただけでも口ずさめるようなメロディアスな作品で、洗練されたポップセンスを感じさせる名曲だ。本作からコラボレーションを組むことになった作詞家のウィル・ジェニングスは、この曲の詞はスティーヴ・ウィンウッドに対するウェイクアップ・コールだと語る。前作の結果に落ち込んでいたスティーヴを復活させるための詞を彼は書いたのである。またこの曲には興味深い裏話がある。唯一のアシスタントとして制作に携わったスティーヴの旧友ノビー・クラークによると、録音中のアクシデントでオープニングとして録音していたドラムパートが消えてしまい、修復を試みたが難しかった。そんな時エンディング用に録音していたモーグによる断片がオープニングにジャストフィットすることを、スティーヴがふと思いついたというのだ。つまり印象的なオープニングのモーグは、実はエンディングに使う予定だったのだ。
Arc Of A Diver
(S.Winwood / V.Stanshall) 5:28
タイトルナンバーは前作でも1曲を共作していた、元ボンゾ・ドッグ・バンドのヴィヴィアン・スタンシャルの作詞による。スタンシャルの妻のことに触れたフレーズも出てくるので、私的な内容をもつ曲なのだろう。R&Bベースではあるが独特な音のうねりが印象的で、この二人の共作曲に特徴的な不思議な音世界が展開されている。聞き込むほどに味わいが増す作品だ。
Second Hand Woman
(S.Winwood / G.Fleming) 3:41
自由奔放なモーグソロをフィーチャーしたこの曲は、R&B風のファンキーなナンバー。前作の同種の曲と比較すると音色はかなり明るく、それはこのアルバム全体のカラーと良くマッチしている。作詞はジョージ・フレミング。
Slowdown Sundown
(S.Winwood / W.Jennings) 5:27
A面を締めくくるこの曲は、マンドリンによる素朴な響きとピアノをメインに配したアコースティカルなバラード。オルガンやモーグがセンスよく絡み合い、実に味わい深い作品に仕上がっている。83年のARMSコンサートでも歌われた。
Spanish Dancer
(S.Winwood / W.Jennings) 6:00
アルバム中最も難解でマニアックな曲がB面冒頭の本作だろう。低空を飛ぶような浮遊感を伴う独特の曲調をもつこの曲のアイディアは、レコーディングの最初期に完成していたようだ。様々な音楽を吸収してきたミュージシャンだけが作れる個性派ナンバーといえる。
Night Train
(S.Winwood / W.Jennings) 7:50
スティーヴ・ウィンウッドの持ち味ともいえる、独特のブラックフィーリングに満ちたR&Bナンバー。ファンキーなリズムをベースに歌われるソウルフルなヴォーカルはもちろん、ギターやキーボードのシャープでスリリングな演奏も素晴らしい。シンプルな曲調ながら、8分近い長さをまったく感じさせないところがさすがだ。
Dust
(S.Winwood / G.Fleming) 6:20
終曲は "Second Hand Woman" と同じジョージ・フレミングの作詞によるナンバー(この作詞家についての詳細は不明)。主にシンセサイザーによって奏でられる美しいメロディーラインに、スティーヴ・ウィンウッドの伸びやかなヴォーカルが心地よくマッチした珠玉のバラードだ。

