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スティーヴ・ウィンウッド・アルバムガイド (ABOUT TIME)

NINE LIVES

Steve Winwood

CD
01. I'm Not Drowning
02. Fly
03. Raging Sea
04. Dirty City
05. We're All Looking
06. Hungry Man
07. Secrets
08. At Times We Do Forget
09. Other Shore

Producer : Steve Winwood

Associate Producer : Johnson Somerset

Engineer : James Towler

Musicians : Steve Winwood (vo,org,g,etc.)
Jose Pires de Almeida Neto (g), Richard Bailey (dr), Karl Vanden Bossche (perc), Paul Booth (sax,fl,Whistle), Tim Cansfield (g), Eric Clapton (g)

Recording : 2007 (Wincraft Studio, UK)

Release : Apl, 2008 (Columbia 88697 22250 2 / US)

NINE LIVES (Limited Edition)

Steve Winwood

CD
01-09. Original Tracks

DVD
30+ minute interview and behind-the-scenes footage
with Steve Winwood

Director (DVD) : Sam Erickson

Producer (DVD) : Kate O'Keefe

Filming (DVD) : 2007 (Wincraft Studio, UK)

Release : Jun, 2008 (Columbia 88697 29787 2 / US)

アルバムについて

スティーヴ・ウィンウッドが還暦を迎える年にリリースとなった5年ぶり待望のソロアルバムは、40年を超える音楽キャリアを総括するような傑作となった。アルバムタイトル "Nine Lives" はソロ9作目にして9曲入りであること、そしてそれぞれの曲に生命(ライフ)が宿っていることに由来した命名であり、ジャケットには9歳の頃のスティーヴ少年の写真がコラージュされている。また内容のほうはいわゆるコンセプトアルバムとは対照的な位置にあり、「小説にたとえるなら長編というより9つの独立したテーマによる短編集のようなもの」とスティーヴ自身が解説している。

収録曲はツアーバンドと同じメンバーによる数々のジャムセッションから生まれた曲が大半らしいが、それをアルバム用に発展させる曲作りの課程において、前作 "About Time" 以上のこだわりが感じられる。そして「バンドサウンドをアルバムに反映したかった」という基本的な狙いは、前作と同路線のスタジオライヴレコーディングというスタイルにより見事に実現されている。ただし前作の魅力のひとつでもあった、一発録りによる荒削りでスリリングなワイルドさは本作においてはやや抑え気味で、その代わりにさまざまな音楽要素を巧みにミックスした、緻密でこだわりのあるサウンドをアルバム全体から聴き取ることができる。完成度という点では前作を凌ぐクオリティを誇る内容に仕上がっている。

スティーヴ・ウィンウッドは本作においてハモンドオルガンをメインで演奏しており、前作と同じくフットペダルにてベースパートを兼任するという独自のスタイルをさらに確固たるものにした。加えてアコースティックギターやエレキギターを数曲にてプレイしている点は、オルガンに徹していた前作と大きく異なるところであり、それはアルバム制作に対するさらなる情熱を感じさせる。さらにそのアコースティックギターを大々的に披露した "I'm Not Drowning" においては、久しぶりにスティーヴ単独による多重録音スタイルを復活させるといった余裕も見せている。また曲作りに関して本人の喩えを引用すると「意外な食材をミックスして未知の味を生み出すシェフ」のように、多様な音楽要素を融合してサウンドに深み出そうと試みたようで、その成果はごく自然な形でアルバムの随所に示されている。スティーヴのセンスで創作された9つのメニューは、いずれも絶妙な隠し味の効いた逸品だ。

バンドメンバーにはギタリスト兼作曲パートナーとして片腕的な存在のホセ・ピレス・デ・アウメイダ・ネト、パーカッションにカール・ヴァンデン・ボッシュという前作からのお馴染みの二人に加え、前作にてパーカッションで部分参加していたリチャード・ベイリーをドラムスに起用、それにサックスやフルートなどの吹奏楽器とオルガンを担当するポール・ブースの4名がラインナップされている。またゲストには最近親交を深めているエリック・クラプトンと、ツアーで共演した経緯のあるティム・キャンズフィールドが参加しそれぞれ1曲ずつギターを弾いている。また元メトロのピーター・ゴドウィンを曲作りのパートナーとして初めて起用しており、ほとんどの作詞を担当していると思われる。

レコーディングはスティーヴ・ウィンウッド所有のお馴染みウィンクラフトスタジオにて行われている。このスタジオと隣接するスティーヴの自宅を含む広大な土地は、英国ミッドランドのグロースターシャ地方にある牧草地の中にある。英国の田舎風景を代表するような佇まいのこの土地をスティーヴは60年代後半に購入しており、その広さは50〜60エーカーにも及ぶといわれている。そしてこの土地は本作初回限定盤に付属のボーナスDVDの舞台でもあり、アルバムの制作過程や自身の音楽観についてはもちろん、生活スタイルや周辺環境などプライベートな話題にまで及んでいるという、大変貴重な記録となっている。

※本作はCDに先行してアナログ盤でもリリースされている。恐らく収録時間の関係によりアナログ盤は2枚組となっており、Aサイドに3曲、あとは各サイドに2曲ずつ収録されているほか、オフィシャルホームページより全曲のMP3データをダウンロードできるコードキーが同封されている。デザインのほうはCDとほぼ同じだがブックレットは付属しておらず歌詞とクレジットは見開きのジャケット内面に印刷されている。また通常CD盤のほかに前述のメイキング映像を収録したボーナスDVD付属の初回限定盤もリリースされている(日本盤DVDは字幕付き)。こちらはフロントデザインが赤を基調とした色違いで、紙ジャケサイズの三面開きデジパック仕様となっている。

収録曲について

I'm Not Drowning
(S.Winwood / P.Godwin) 3:32
フォークブルーズ調のシンプルなオープニングナンバーでは、スティーヴ・ウィンウッドのアコースティックギターを存分に堪能することができる。メイキング映像で「ブルーズはスペンサー・デイヴィス・グループ時代によく聴いていた」と回想しているように、スティーヴの音楽ルーツへの回帰という印象が強い。作詞担当のピーター・ゴドウィンは、「ロバート・ジョンソンが生きていてチェルシーあたりで演奏したらこんな感じだろう」とイメージして書いたという。

Fly
(S.Winwood / P.Godwin / J.Neto) 7:49
本作の中でもとりわけメロディアスで美しいバラード風のナンバー。「ブラジルと南アフリカとケルトの音楽をミックスすることに成功したんだ」とスティーヴ・ウィンウッド本人が解説しているように、ギターやパーカッション、吹奏楽器の奏でるフレーズの随所に異国風な諸要素が散りばめられている。しかしそれらをごく自然に解け合わせてひとつの完成された曲として聴かせてしまうところに、抜群の音楽的センスとバランスの良さを感じさせる。

Raging Sea
(S.Winwood / P.Godwin / J.Neto) 6:17
ホセ・ネトのギターが刻む快活で特徴的な7/4拍子のリズムをベースに、ブラジル音楽の要素を巧みに取り入れた野心的なナンバー。ラテンな陽気さとジャムセッションっぽいスリリングさを併せ持った曲調が魅力だ。「ある人がこの曲を "ブラジル風ヒップホップ" と表現したよ」とスティーヴ・ウィンウッドはインタヴューで語っている。

Dirty City
(S.Winwood / P.Godwin) 7:44
フォーカストラックとしてアルバムに先駆けてリリースされた本作中で最もストレートなロックソング。交友を深めているエリック・クラプトンの流麗なギターソロをエンディングにフィーチャーした点も話題性として大きいが、それ以上にスティーヴ・ウィンウッドが全編でギターを弾きまくっているのが最大の聴き所だ。殺伐とした都会生活をリアルに描いた歌詞とパワフルかつシンプルな曲調がよく似合っている。

We're All Looking
(S.Winwood / P.Godwin) 5:25
スティーヴ・ウィンウッドのファンキーなハモンドとパワフルなヴォーカルが終始リードするご機嫌なオルガンロック。さらにスティーヴは全編でアコースティックギターも弾いており、途中でアクセントとなるような粋なソロも披露する。ホセ・ネトが作曲にも演奏にも参加していないためか、本作の中では最もウィンウッド色が濃厚だ。

Hungry Man
(S.Winwood / P.Godwin / J.Neto) 7:07
ホセ・ネトが南アフリカでアイアート・モレイラらと共演した後、現地の演奏技術をスティーヴ・ウィンウッドらに披露したところから誕生した曲。メイキング映像でスティーヴは「曲のアイデアをジョゼー(ホセ)からいただいたが、本人は全く覚えてないらしいよ」と愉快そうに語っているのが印象的。枯渇した大地に生きる人を描いた歌詞を背景に、ネトのギターの奏でる独特のリズムがアフリカンなムードを演出、スティーヴのオルガンの響きもどこかエキゾチックで聴き応えのある力作だ。またこの曲にはビージーズとの共演歴もあるセッション・ギタリスト、ティム・キャンズフィールドが参加している。

Secrets
(S.Winwood / P.Godwin / J.Neto) 6:41
スティーヴ・ウィンウッドのシャープなハモンドオルガンを中心に、カリビアンっぽいリズムを奏でるギターとパーカッション、それにポール・ブースのトラフィック風ともいえるフルートが絡み合いスピーディに展開していく。まさにジャムセッションから誕生したと思わせるパワフルでストレートな曲調は、ライヴで本領を発揮しそうだ。

At Times We Do Forget
(S.Winwood / P.Godwin / J.Neto) 5:57
スティーヴ・ウィンウッドの得意とするR&B風のハモンドオルガンと、ホセ・ネトの南国ラテンフレイヴァーに満ちた陽気なギターが心地よくマッチしている。スティーヴの明るいヴォーカルからも曲全体のノリの良さからも、バンドが一体となって生き生きと演奏している様子が伝わってくるような幸福感に満ちた一曲だ。

Other Shore
(S.Winwood / P.Godwin / J.Neto) 6:41
英国風の気品のある旋律と味わい深い詩が印象的なこのラストナンバーについて、スティーヴ・ウィンウッドは「メロディと歌詞を合わせた時に独特の魅力を放ったんだ」と述懐している。バンドメンバー全員の思い入れが強かったというのにもうなずけるほど、この曲にはぐっと惹きつけられる独特の魅力がある。スティーヴの心に響くエモーショナルなヴォーカルを軸に、スローテンポでじっくりと聴かせる前半から、優雅なメロディを奏でるサックスを交え、バンドが一体となって次第に盛り上がりをみせる後半への流れが素晴らしい。まさにラストを飾るにふさわしい名曲名演だ。

NINE LIVES
NINE LIVES
NINE LIVES
LIMITED EDITION