REFUGEES OF THE HEART
Steve Winwood
CD
01. You'll Keep On Searching
02. Every Day (Oh Lord)
03. One And Only Man
04. I Will Be Here
05. Another Deal Goes Down
06. Running On
07. Come Out And Dance
08. In The Light Of Day
Producer : Steve Winwood
Engineer : Tom Lord Alge
Musicians : Steve Winwood (vo,key,org,b,g,syn,vibes,dr)
Jim Capaldi (dr,perc), Larry Byrom (g), Anthony Crawford (g), Michael Rhodes (b), Mike Lawler (key), Randall Bramblett (sax), Jim Horn (sax), Harvey Thomson (sax), Michael Haynes (tp), Russ Kunkel (dr), Eddie Bayers (dr), Bashiri Johnson (perc)
Recording : Spring 1989 -90 (Netherturkdonic Studio, England / Emerald Sound, Nashville)
Release : Nov.1990 (Virgin CDV 2650 / UK)
アルバムについて
前作から約2年半の歳月をおいて90年にリリースされたスティーヴ・ウィンウッドのソロ第6作。このアルバムはナッシュヴィルと、久々に英国グロースターシャにある自宅スタジオの両方で制作されている。妻のユージニアがアメリカ人だったこともあり、スティーヴは英国とナッシュヴィルの両方に生活の拠点をおいているようだ。リズムセクションにはマイケル・ローデスとラス・クンケルを、サックスにはランドール・ブラムレットを起用、スティーヴはキーボードとオルガンをメインで担当している。そして旧友ジム・キャパルディも2曲でドラムスを担当、前作と同様に1曲をスティーヴと共作している。その他の7曲の作詞はゴールデンコンビのウィル・ジェニングスが書き下ろしている。
アルバム全体の作風は、前作と比較するとかなりソフトでアダルトな雰囲気になっていて、曲作りは堂に入ったような余裕すら感じられる。プロデュースにはスティーヴ・ウィンウッド自身があたり、エンジニアは前作に引き続きトム・ロード・アルジが担当、非常に奥行き感のある良好な音質で録音されている。スティーヴは「このアルバムはややトラフィックっぽい音になった」と後に述べているが、その指向はジムと二人で再編した、新生トラフィックの94年のアルバムに引き継がれることになる。
全編に幸福感のあふれる優雅な作風は、公私ともに充実した幸せ一杯のスティーヴ・ウィンウッドの素直な感情の現れだろう。再婚したユージニアとの相性は抜群のようで、この時にはすでに二人目の子供も誕生している。前2作ほどの商業的成功を収めることはなかったが、各曲のクオリティはそれらと同等に非常に高くリスナーを十分に満足させてくれる内容である。ハードな作風が魅力だった前作より、ここではスティーヴのそれ以前のソロ作に近い音が展開されているので、より身近に感じたファンも多いはずだ。
しかし約2年ごとにコンスタントに制作されていたソロアルバムは、この作品を境にさらにインターヴァルをおくようになってしまう。次作は4年後の新生トラフィックのアルバムまで待たなくてはならず、ソロアルバムはなんと7年後まで制作されない。これをどう解釈するかは難しいが、あるインタヴューでスティーヴ・ウィンウッドは「ミュージシャンが頻繁にアルバムをリリースせず、制作に十分な時間を割く」という現在の状況を歓迎するような発言をしている。しかしファンとしてはせめて2〜3年に一度くらいは、新作が聴きたくなるのが正直なところだ。
収録曲について
You'll Keep On Searchin'
(S.Winwood / W.Jennings) 6:21
メロウなサックスソロで始まるこの曲を聴くと、前作との音作りの違いがはっきりと感じられる。シックでアダルトな曲調が魅力で、スティーヴ・ウィンウッドの余裕のあるハモンドオルガンもいい味を出している。もちろんソウルフルなヴォーカルも健在でより円熟味を増した深さがある。
Every Day (Oh Lord)
(S.Winwood / W.Jennings) 5:50
私生活における幸福感がストレートに反映されたメロディアスな作品。中盤からミニモーグも入り、かつてスティーヴ・ウィンウッドが一人で創り上げていた頃のサウンドを思い出させてくれる。
One And Only Man
(S.Winwood / J.Capaldi) 5:02
旧友ジム・キャパルディとの共作曲。前作収録 "Hearts On Fire" の続編的な内容で、その雰囲気を継承するファンキーかつエキゾチックなリズムが魅力の曲だ。スティーヴ・ウィンウッドのキーボードも最高だし、久々に登場したジムのドラムスも乗っている。二人の曲ではよりプレイヴェートな内容の詞が書かれることが多いが、この曲もユージニアに対する熱き思いが歌われていて、「田舎で子供を育てよう」というくだりはまさに彼らの実生活を物語っているようだ。ファーストシングルとしてヒットを記録、B面にはアルバム未収録のインスト曲 "Always" を収録する。
I Will Be Here
(S.Winwood / W.Jennings) 6:02
これまでのスティーヴ・ウィンウッドの作風とは異なる、哀愁感漂うアダルトな雰囲気のバラード。儚さを感じさせるヴォーカルが絶品で、こういうタイプの曲でもスティーヴの声は抜群にフィットするのがさすがだ。またハモンドオルガンやサックスの控えめな演奏も、優美な情景の演出に一役買っている。
Another Deal Goes Down
(S.Winwood / W.Jennings) 4:58
アルバム "Back In The High Life" 収録の "Split Decision" を彷彿とさせる、スライドギターが激しく鳴り響くパワフルな作品。タイトでシンプルなリズムにシャーブなハモンドオルガンが重なり、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルにも迫力がある。なおアルバムタイトルは、この曲の歌詞の一節から取られている。
Running On
(S.Winwood / W.Jennings) 4:20
シンプルでノリの良いアメリカ風の軽快なソウルナンバー。前作を思い出させるような、ブラックフィーリングたっぷりのヴォーカルとキーボードが最高だ。スペンサー・デイヴィス・グループ時代のヒット曲 "Keep On Running" を意識したようなタイトルが面白い。
Come Out And Dance
(S.Winwood / W.Jennings) 5:35
前曲の流れを引き継いだスティーヴ・ウィンウッドらしいR&B風の曲。セッションメンバー全員が一発取りしたような、ビッグバンド風のライヴな感覚のノリが爽快だ。ジム・キャパルディがドラムスを担当、スティーヴはハモンドに加えギターも弾き、ファンキーなホーンセクションが曲を盛り上げる。
In The Light Of Day
(S.Winwood / W.Jennings) 9:43
終曲はスティーヴ・ウィンウッドの新たな方向性を示す注目の作品だ。久々に9分を越す長丁場で、前述の「トラフィックっぽい」というのは特に本作を指すのではないだろうか。この曲における主役はヴァイブ(ヴァイブラフォン)というマリンバに似た打楽器で、音板と共鳴管の間のファンでヴィブラートを付けることができるものだ。これをアルバムで初めて取り入れ、中盤ではソロも披露、来日公演でもこの楽器を持ち込んで演奏していた。シンプルかつ渋いジャズ風のナンバーで、次第に引き込まれていくような不思議な魅力を放っている。


