ROLL WITH IT
Steve Winwood
Side A
01. Roll With It
02. Holding On
03. The Morning Side
04. Put On Your Dancing Shoes
Side B
05. Don't You Know What The Night Can Do?
06. Hearts On Fire
07. One More Morning
08. Shining Song
Producers : Steve Winwood, Tom Lord Alge
Engineer : Tom Lord Alge
Musicians : Steve Winwood (vo,org,key,g,b,dr,syn)
Paul Pesco (g), Mike Lawler (key), Robby Kilgore (key), John Robinson (dr), Bashiri Johnson (perc), Wayne Jackson (tr,tb), Andrew Love (sax), Tessa Niles (vo), Mark Williamson (vo), Jimmy Bralower (dr-prog), Tom Lord Alge (perc), Memphis Horns (horn-arr.)
Recording : 1987-88 (Windmill Lane, Dublin / McClear Place, Tronto)
Release : Jun.1988 (Virgin V 2532 / UK)
アルバムについて
長年在籍したアイランドからヴァージンにレーベル移籍してリリースされたスティーヴ・ウィンウッドのソロ第5作。共同プロデューサーに前作でエンジニアを担当したトム・ロード・アルジを迎え、ダブリンとトロントで制作された。全8曲中ウィル・ジェニングスとの共作が7曲、残りの1曲は旧友ジム・キャパルディと久々にペンをとっている。本作には豪華なゲストミュージシャンは招かれていないが、前作でプレイしたバックミュージシャンやスタッフを一部起用、スティーヴ自身もかなり多くの楽器をプレイし、フェアライトのプログラミングも全て行っている。それにメンフィスホーンズの起用もこのアルバムのサウンドを特徴づけている。
ソロアルバム中では最もブラックフィーリング濃厚な作品で、50〜60年代アメリカのR&Bをベースにした、渋めのソウルナンバーが全編に並ぶ。大ヒットだった前作の後なのでプレッシャーを感じた部分もあったというが、このアルバムを聴く限りそのサウンドは自信に満ちており、スティーヴ・ウィンウッドのセンスが最高度に発揮された傑作となっている。全米最高位は第1位、受賞こそ逃したが同年のグラミーにも3部門でノミネートされた(トム・ロード・アルジがエンジニア部門で再受賞)。
アルバムジャケットのショットや "Roll With It" のツアープログラムを見ると、スティーヴ・ウィンウッドのイメージが前作とまったく違うことに気が付く。ここでのスティーヴは黒い革ジャケットに白のTシャツ、そして黒髪のオールバックというスタイルで、これはまさにアメリカの市場を意識したイメージチェンジだった。そしてこの雰囲気はアルバムの内容とも良くマッチしている。ヴァージンレコードのアメリカ進出に伴う足がかりにスティーヴを起用したのは成功だったわけで、スティーヴもまた古巣のアイランドに見切りをつけるだけの契約金をヴァージンから受け取っている。
またこのアルバムをリリースするまでの間には、私生活でもユージニアとの再婚や初の子供の誕生など幸せな出来事が続き、40歳を迎え公私共に充実したスティーヴ・ウィンウッドの驚くほどにパワフルな成果が、このアルバムで十分に発揮されている。一方でタイトル曲の "Roll With It" は後に盗作問題で訴えられている。皮肉にもスティーヴが好きなジュニア・ウォーカー&ザ・オールスターズのヒット曲 "Roadrunner" がその対象曲で、編集盤 "The Finer Things" の同曲のクレジットに "Roadrunner" 作曲者の名が並記されている。
収録曲について
Roll With It
(S.Winwood / W.Jennings) 5:20
オープニングのドラムスからラストまで一気に突っ走るタイトルナンバー。最高にソウルフルなハイトーンヴォイスは、R&Bベースの豪快なリズムを持つこの曲にベストフィットしている。アルバム全編にいえることだがスティーヴ・ウィンウッドの声は非常に艶があり、若き日のスペンサー・デイヴィス・グループ時代のヴォーカルをオーバーラップして聴いてしまう。さらにこの曲ではマルチプレイヤーぶりも発揮している。ハモンドやピアノはもちろん、ギター、ベース、ドラムスに至るまで全てスティーヴが担当、これにメンフィス・ホーンズのアレンジによるソウル風ホーンセクションと、黒っぽい女声バックヴォーカルをプラスしている。ファーストシングルとしてカットされて、2枚目の全米ナンバーワンを獲得、ビルボードの88年トップソングにもセレクトされた。モノクロで渋いミュージック・ヴィデオも必見。
Holding On
(S.Winwood / W.Jennings) 6:16
前曲の雰囲気をそのまま受け継いだ、パワフルかつシャープな音作りによるソウルナンバー。よりハードなリズムがこの曲に鋭角的な魅力を加味している。スティーヴ・ウィンウッドはギター、キーボード、それにハモンドを担当、女声バックコーラスとの絡みも良い。
The Morning Side
(S.Winwood / W.Jennings) 5:14
スローダウンしたテンポで一息つかせてくれる、清々しい曲調のシンプルなナンバー。スティーヴ・ウィンウッドはモーグベースとキーボードを演奏している。前作からのセッションメンバーであるジョン・ロビンスンのドラムスも大活躍だ。
Put On Your Dancing Shoes
(S.Winwood / W.Jennings) 5:13
A面の終曲は曲名とぴったりのファンキーなダンサブルナンバー。この曲ではホーンセクションを入れないシンプルな音作りがされており、粋なヴォーカルを引き立てている。スティーヴ・ウィンウッドはキーボードとシンセを担当。
Don't You Know What The Night Can Do?
(S.Winwood / W.Jennings) 6:55
スローテンポではあるが、それでいてシャープさを失っていないのがこの作品。曲の長いタイトルそのものにも強いインパクトがあるが、そこにあてがわれたメロディがまた素晴らしい。流麗なシンセサイザーが全編を包み込み、タイトルのフレーズを女声ヴォーカルと掛け合うエンディングもまたスリリングだ。ウィンウッド&ジェニングス・コンビの真骨頂といえる名曲。なおこの曲はツアー・スポンサーだったビール会社のCMソングに使われた。
Hearts On Fire
(S.Winwood / J.Capaldi) 5:17
旧友ジム・キャパルディとの久々のコラボレーション。曲調はまさにR&Bをベースにしたソリッドなロックで、中盤のハモンドソロもノリにのっていて最高だ。歌詞ではスティーヴ・ウィンウッドが妻ユージニアと出会った時の思い出が熱く歌われていて、かつての名曲 "While You See A Chance" のワンフレーズがジャストフィットしている。
One More Morning
(S.Winwood / W.Jennings) 5:00
このアルバムにはバラードらしき曲がひとつもない。強いて言うならばこの曲が熱くなったリスナーをクールダウンさせてくれるだろう。スティーヴ・ウィンウッドによるピアノとオルガンの使い方も上手いが、ホーンのアレンジ(この曲のみスティーヴが担当)がどことなく東洋風で朝焼けの情景を演出する。ベースとギターもスティーヴが担当。リリースの少し前に亡くした母リリアンに捧げられている。
Shining Song
(S.Winwood / W.Jennings) 5:29
ラストは明るいトーンが魅力の一曲で、このアルバムでは控えめだったミニモーグも登場する。歌詞の各節ではスティーヴ・ウィンウッドを取り巻く女性たち、すなわち誕生したばかりの娘メアリ・クレア、妻ユージニア、そして天に召された母親のことが歌われている。

