TALKING BACK TO THE NIGHT
Steve Winwood
Side A
01. Valerie
02. Big Girls Walk Away
03. And I Go
04. While There's A Candle Burning
05. Still In The Game
Side B
06. It Was Happiness
07. Help Me Angel
08. Talking Back To The Night
09. There's A River
Producer : Steve Winwood
Engineer : Steve Winwood
Cover Designer : Tony Wright
Musicians : Steve Winwood (vo,syn,g,key,b), Nicole Winwood (vo)
Recording : Nov.1981- Jun.82 (Netherturkdonic Studio, England)
Release : Sep.1982 (Island ILPS 9777 / UK)
アルバムについて
スティーヴ・ウィンウッドの3枚目となるソロアルバムは、前作からわずか約1年半のインターヴァルをおいて発表された。これはスティーヴのソロ作品のリリース間隔の中では最も短く、前作ツアーを終えてから間もない81年末には制作に着手している。大ヒットした前作の成功がスティーヴに自信を与え、制作意欲に拍車をかけたに違いない。このアルバムも作曲と全ての楽器演奏、そしてプロデュースとエンジニアリングを単独でこなし、作詞だけはウィル・ジェニングスが全曲担当している。また当時の妻ニコルが2曲でバックヴォーカルを歌う。レコーディングも前作同様、英国グロースターシャにある自宅スタジオで行われている。
入魂の作 "Arc Of A Diver" で培った経験を上手く生かし、本作では単独作業のノウハウも十分に理解していたのだろう。余裕がでてきたことで制作期間を大幅に短縮し、よりシンプルかつスマートに仕上げた印象が強い。アルバム全体のカラーは前作以上に統一感があり、全編がポップセンスに溢れた明るいイメージで彩られている。
しかし残念ながらこのアルバムは、スティーヴ・ウィンウッドの期待に反し当初予想していたような成功を収めることはできなかった。何が問題だったのかは分からないが、前作の成功がもたらした自信と余裕が、逆に裏目に出たのかもしれない。スティーヴは再び自信を喪失し、次の作品に着手するまでに長いインターヴァルをおくことを余儀なくされた。一時はミュージシャンとしてアルバムをリリースすることを諦め、プロデューサーに転向しようとさえ考えたようだ。
しかしこれを思いとどまらせ、さらなる飛躍をスティーヴ・ウィンウッドに促したのは、絶大な信頼を寄せる兄マフ・ウィンウッドだった。ティーヴは当時を振り返りス「昔から意見が異なることはたびたびだったが、結果的にはいつもマフが正しかった」と、誇らしげに兄のことを語っている。ところでセールス的には失敗したとはいえこのアルバム、クオリティがそれほど低いわけではないし、前作よりもむしろ聴きやすいメロディアスな曲が並んでいるのも事実だ。今となれば本作も、スティーヴの重要なソロ作品としてディスコグラフィーに彩りを加える、味わい深い1枚だ。
収録曲について
Valerie
(S.Winwood / W.Jennings) 4:08
トップを飾るのはキャッチーでソリッドなメロディが魅力のナンバー。しかし内容はアンチドラッグを訴えており、歌詞をメインで書かないスティーヴ・ウィンウッドにしては珍しいメッセージソングとなっている。ここで歌われる「彼女」というのは、スティーヴが当時、セッションで共演していたマリアンヌ・フェイスフルのことを指しているらしい。彼女は当時アルコールとドラッグを大量摂取して、イメージチェンジを計っていた。スティーヴ自身はドラッグに陥るタイプではなかったようだが、過去の共演者にはドラッグで命を失ったミュージシャンが多いことから、スティーヴのドラッグに対する反感はかなり大きいと思われる。暗示的だがトラフィックのクリス・ウッドやリーボップ・クワク・バーも、後にドラッグの後遺症でこの世を去っている。
Big Girls Walk Away
(S.Winwood / W.Jennings) 3:53
シンセサイザーを効果的に使ったポップな作風のこの曲では、スティーヴ・ウィンウッドの前妻ニコルのバックヴォーカルを聴くことができる。ロス出身の都会的な女性で、スティーヴとはクリス・ウッドの妻ジャネット・ヤコブス(スティーヴとエアフォースで共演)を通じて知り合い結婚したが、二人の相性はあまり芳しくなかったらしく86年に別れている。ちなみにニコルの祖母メアリ・エンジェル・タコットは、米国ミネソタ州リッチフィールド出身の舞台女優で、孫娘がロックスターと結婚したことを誇りに思っていたという。
And I Go
(S.Winwood / W.Jennings) 4:14
じっくりと聴かせるバラードスタイルの美曲。全編を流れるオルガンの音色がことのほか美しく、スティーヴ・ウィンウッドの憂いを帯びたヴォーカルと相まって、しっとりとした魅力を放っている。隠れた名曲だ。
While There's A Candle Burning
(S.Winwood / W.Jennings) 3:13
静かな夜のひとときを物語るようなジェントルな曲調のバラード。若干インパクトの弱さも否めないが、コンパクトかつポップな曲が並ぶ本作の中で、全体に自然に溶け込むようなシンプルな作風でまとまっている。
Still In The Game
(S.Winwood / W.Jennings) 4:52
冒頭の "Valerie" と同タイプのシングルにふさわしいキャッチーなナンバー。これほど聴きやすいメロディーをもつ曲は、これまでの作風には見られなかったもので、スティーヴ・ウィンウッドのソロ作品中でもとりわけポップな曲調となっている。この曲でも前妻のニコルが素人とは思えない素晴らしいコーラスを披露、ミュージック・ヴィデオではその姿を見ることができる。
It Was Happiness
(S.Winwood / W.Jennings) 4:58
B面は前作にも通じるようなR&B風の渋めの曲が並んでおりA面との対比が面白い。1曲目は哀愁感の漂うアダルトな雰囲気の曲で、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルが上品に響く。
Help Me Angel
(S.Winwood / W.Jennings) 5:06
この曲もポップセンスに溢れて都会的に洗練されてはいるが、やはりベースにはR&Bがある。スティーヴ・ウィンウッドのハイトーンヴォーカルも曲調に上手くマッチしていて最高だ。後にこの曲と次のタイトル曲、それに "Valerie" の3曲はトム・ロード・アルジにより骨太なサウンドにリミックスされ、87年のベスト盤 "Chronicles" に収録された。
Talking Back To The Night
(S.Winwood / W.Jennings) 5:46
タイトルナンバーは、明るいイメージの本作の中では一番の異色作だろう。ロマンチックだがどこか退廃的な都会の夜を想起させる曲で、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルもシンセサイザーも、そんなイメージにふさわしく翳りを帯びている。歌詞にはトラフィックのクリス・ウッドや、友人ヴィヴィアン・スタンシャルのことを歌ったフレーズも登場、スティーヴから見た彼らのイメージが歌われていて興味深い。
There's A River
(S.Winwood / W.Jennings) 4:38
終曲はスローテンポでじっくり聴かせるバラード。スティーヴ・ウィンウッド自身によるハーモニーヴォーカルも主旋律と上手く解け合い、優雅で郷愁感に満ちたメロディも美しい。なおこの曲はシングルカットされ、B面にはアルバム未収録曲の "Two Way Stretch" が収録されていた。

