FAR FROM HOME
Traffic
CD
01. Riding High
02. Here Comes A Man
03. Far From Home
04. Nowhere Is Their Freedom
05. Holy Ground
06. Some Kinda Woman
07. Every Night, Every Day
08. This Train Won't Stop
09. State Of Grace
10. Mozambique
Producer : Steve Winwood
Assistant Producer : Jim Capaldi
Engineers : Mick Dolan, Steve Winwood
Cover Designer : Steve Gerdes
Musicians : Steve Winwood (vo,g,org,p,b,syn), Jim Capaldi (dr,perc,vo), Davy Spillane (uilleann pipes), Mick Dolan (g)
Recording : 1993 -94 (Woodstock, Kilcoole, Eire)
Release : May.1994 (Virgin CDV 2727 / UK)
アルバムについて
実に20年ぶりとなるトラフィックの再結成アルバムがリリースされた。キーパースンともいえるクリス・ウッドが他界しているため、メンバーはスティーヴ・ウィンウッドとジム・キャパルディの二人、史上最小ユニットの新生トラフィックである。10曲中9曲でスティーヴがヴォーカルを担当し、1曲はインストルメンタル。ソングライティングは全曲スティーヴとジムのペンによる共作だ。演奏はドラムスとパーカションをジムが担当する以外、いつものようにスティーヴがマルチプレイヤーぶりを発揮している。
全体のサウンドはR&Bをベースとしたスティーヴ・ウィンウッドのソロの方向性が濃厚だが、トラフィック独特のトラッド的な雰囲気やジャズ風な展開も見せている。かつてのトラフィックの曲のようにランニングタイムも長めだ。独特のジャズフレイヴァーを持ち込んでいた吹奏楽器奏者クリス・ウッドの不在は、トラフィックにとっては致命的ではあるが、このバンドはもともと、その時々で異なる音作りをして独自路線を貫くユニットなので、これが90年代のトラフィックの音と捉えればとりわけ違和感はない。それにスティーヴのシンセサイザーによるサックスとフルートは、トラフィックにふさわしいサウンドを随所で見事に再現している。「録音している間中、彼の魂が近くにいたような気がした」とスティーヴは述べているが、その音色はまさにクリスが奏でているように聴こえる。
本作のレコーディングはアイルランドで行われた。これはかつてバークシャーの片田舎で集った、初期トラッフィク時代の雰囲気を求めてのことだという。これが功を奏したのか、スティーヴ・ウィンウッドとジム・キャパルディの長いキャリアを反映してか、充実感のあるツボを押さえた好作品に仕上がっている。ソロとトラフィックでは意識的に違うサウンド作りを目指しているようだが、スティーヴがこれまでに吸収してきた様々な音楽スタイルは、このアルバムでも巧みにブレンドされているようだ。二人はこのバンド活動が有意義であったと述べており、1度きりのユニットではないと断言しているので、いつか再びトラフィックのアルバムが生まれることに期待したい。本作は83年に若くして命を落としたクリス・ウッドに捧げられた。
収録曲について
Riding High
(S.Winwood / J.Capaldi) 5:30
冒頭のこの曲から、新生トラフィックのアルバムに大きな期待感を抱かせるだけのパワーがある。激しくリズミカルなパーカッションとオルガンに、力強くソウルフルなヴォーカルが重なる。この1曲だけでスティーヴ・ウィンウッドの声が今だ健在だということを十分に証明している。二人が生み出す90年代トラフィック・サウンドは、粘り腰の効いたパワフルなもので、熟練したミュージシャンによる安定した職人芸を見せつけられているようだ。
Here Comes A Man
(S.Winwood / J.Capaldi) 5:06
落ち着きのあるシックな作風で、R&Bをベースにした黒っぽいサウンドを聴かせる。ここではスティーヴ・ウィンウッドのギターとキーボードに加え、シンセサイザーによるフルートの音色にも注目したい。まるでクリス・ウッドが吹いているかのようだ。このアルバムからの第1弾シングルにはこの曲が選ばれている。
Far From Home
(S.Winwood / J.Capaldi) 8:33
アルバムのタイトルトラック。90年のソロアルバムに収録されていた実験的な大作、 "In The Light Of Day" をさらに発展させたような作風。シンプルなリズムをベースにマイナー調のメロディを重ね、キーボードやギターがファンキーな味付けを加える。控えめな曲調でありながら、どこか惹きつけられるような独特の魅力を放つ力作だ。
Nowhere Is Their Freedom
(S.Winwood / J.Capaldi) 6.57
全曲中で、従来のトラフィックらしいサウンドに最も近づいているのがこの曲。ピアノが刻む独特のリズムや憂いをおびたヴォーカルが魅力のナンバーだが、注目は随所に入るフルート。一説によるとこの演奏は、クリス・ウッドの昔のテープ録音をサンプリングしたものだという。これが事実なら、この曲こそオリジナルメンバー3人による20年ぶりの共演になるわけだ。またこの曲にはミック・ドランがリズムギターで参加している。
Holy Ground
(S.Winwood / J.Capaldi / D.Spillane) 7:48
この曲でアルバムの雰囲気が変わる。ソングライターにはスティーヴ・ウィンウッドとジム・キャパルディに加えて、アイリッシュ系のミュージシャン、デイヴィ・スピラーンの名がクレジットされている(スティーヴは、スピラーンの94作 "A Place Amang The Stone"にリードヴォーカルで参加)。彼が奏でる英国の民族楽器イーリアンパイプの古めかしく伝統的な音色が、この曲のスタイルを決めている。トラフィックの生み出した数あるバラードの中でも、とりわけ美しいメロディを持った傑作といえるだろう。ここでは歌詞にも注目したい。現代の物質社会に対しさりげなく疑問を投げかけたような自然賛歌は、まさにこの曲の優雅で壮大な作風に相応しい。詩の内容がダイレクトで分かり易くそれだけに説得力がある。
Some Kinda Woman
(S.Winwood / J.Capaldi) 5:26
ここで再び雰囲気が変わりR&Bっぽいファンキーな曲が登場する。スティーヴ・ウィンウッドの奏でるシンセサイザーによるサックスソロが、夜の危険な情景を演出し、ジム・キャパルディとのヴォーカルのコラボレーションも手堅く決まっている。第2弾シングルとしてリリースされた。
Every Night, Every Day
(S.Winwood / J.Capaldi) 5:30
ノリの良いピアノとオルガン、それにシンセによるサックスやホーンセクションの響きが心地よいご機嫌のナンバー。この曲から次曲にかけてのスピード感溢れる音の流れも最高だ。
This Train Won't Stop
(S.Winwood / J.Capaldi) 5:23
ドライヴ感溢れるオルガンをフィーチャーしたこの曲は、ゴスペルタッチのグルーヴ感が最大の魅力。シンプルだが、曲と歌詞が織りなすバランス感が最高で、若々しい疾走感に満ちあふれている。中盤のシャープなギターや、終盤におけるジム・キャパルディとのヴォーカルの掛け合いも聴きどころ。
State Of Grace
(S.Winwood / J.Capaldi) 7:16
スローテンポで大作風な趣のこの曲は、アルバムが終りに近づいたことを仄めかす。シリアスな雰囲気のオープニングから、優雅なアコースティックギター・ソロをフィーチャーした中盤を経て、曲調を変えながらパーカッションを強調しつつリズミカルにエンディングを迎える。伸びのあるヴォーカルが魅力の雄大な作品だ。
Mozambique
(S.Winwood / J.Capaldi) 4:22
終曲はトラフィックらしく、演奏そのものを重視したインストルメンタル・ナンバー。ジムによるスパイスを利かせたパーカッションをベースに、スティーヴ・ウィンウッドによるエスニック風のギターとキーボードをたっぷり楽むことができる。
