LIVE NOVEMBER 1970
Traffic
Side A
01. Backstage & Introduction
02. Who Knows What Tomorrow May Bring
03. Glad
Side B
04. Pearly Queen
05. Forty Thousand Headmen
06. Can't Find My Way Home
07. Dear Mr.Fantasy
Producer : Chris Blackwell?
Musicians : Steve Winwood (vo,g,org,p), Jim Capaldi (dr,perc,vo), Chris Wood (fl,sax), Rick Grech (b,vn)
Recording : Nov.1970 (Filmore East, N.Y.)
Release : Feb.1971 / Unreleased (Island ILPS 9142)
リリース中止の経緯 (1)
トラフィック初のフルライヴ盤になるはずだった "Live-November 70" は、70年11月18日と19日、ニューヨークのフィルモアイーストで行われた2回の公演を録音したものだった。ステージではオリジナルメンバー3人に加え新しく加わったリック・グレッチがベースとヴァイオリンを担当。ライヴ収録後すぐにミックスされテストプレスが作られ、プロモーション用のポスターや広告、ジャケットカヴァーが印刷された。英米の音楽誌は収録予定曲を掲載すると同時にブラインド・フェイスのナンバーや、かなり長いヴァージョンの "Glad"、そしてバックステージでの会話や挨拶なども収録される予定であることを伝えた。
その後「マスターテープの紛失」を理由にリリース時期が遅れるというニュースが報じられた。英国へ飛行機で戻る際に消失したという説や、メンバーがテープを破棄したという説まで流れたが、スティーヴ・ウィンウッドはメディアに対し、完成品に満足できなかったこと、アルバムの半分を彼の新しいホームスタジオで録音した新曲と入れ変える意向があることを伝えた。しかし結局このアルバムはリリースされずに闇の中に葬られることになってしまった。以上が幻のアルバム "Live-November 70" に関する問題の最有力説である。しかしこれと平行して以下のような興味深い出来事も生じている。
リリース中止の経緯 (2)
アメリカにおけるトラフィック作品の配給元であるUA(United Artists) は、スティーヴ・ウィンウッドらの承諾なしに "Winwood" というタイトルのアルバムを71年5月にリリースした。これはベスト盤的な内容の2枚組で、スペンサー・デイヴィス・グループ時代から70年までの作品を収録していた(詳細はソロの "Winwood" 頁を参照)。しかしジャケットにはスティーヴの顔写真と "Winwood" の文字だけでバンドやメンバー名の記載すらもなかった。これにはスティーヴのソロアルバムを期待するファンに、それと間違って買わせるという狙いもあったようだ。
某音楽誌はこのアルバムを「スティーヴ・ウィンウッドのキャリアの集積として価値がある」と評価したが、スティーヴとアイランド社長のクリス・ブラックウェルは、スペンサー・デイヴィス・グループの疑似ステレオ音源の使用など技術的な問題も含め、その悪質な商法にはかなり憤慨したようだ。二人はこれに対する処置として、同アルバムの演奏を控えるようアメリカの主要なラジオ局に電報を打ち、評価記事を載せた音楽誌に対しても異議を唱えた。これと同時期にトラフィックはUAからもう1枚アルバムを出す契約があり、当初 "Live-November 70" が予定されていた。しかしブラックウェルはUAに対し、「"Winwood" を市場から回収しない限り、今後トラフィックのアルバムリリースを許可しない」と言明。法的な手段に訴えて回収を迫った結果、同アルバムはひと月以内に市場から姿を消した。
その頃トラフィックはメンバーを補充し、スタジオ録音の新作 "The Low Spark 〜" のセッションを開始していたため、"Live-November 70" はこの新編成トラフィックを代表するものではなくなっていた。このためUAとのリリース契約のアルバムは、新メンバーで71年7月に急遽録音されたライヴ盤 "Welcome To The Canteen" に変更された。アイランドがUAとの契約アルバムをスタジオ録音の新作ではなくこのライヴ盤にしたのは、次の新作がヒットすると予想していたからというのが有力な説だ。また同ライヴの模様が収録直後にラジオで放送されたのは、UAに対するセールス妨害のような意図があったのかもしれない。いずれにせよ真相ははっきりしないままだ。ところでUAリリース最後となった "Welcome To The Canteen" のジャケットには、トラフィックというバンド名は見あたらず、代わりに全員のメンバー名が列記されていた。これはアルバム "Winwood" とまったく正反対の方策というわけだ。
なお "Live-November 70" に収録予定だった音源のうちA面曲は、英盤リマスターCD "John Barleycorn Must Die" に追加収録されている。


