THE LOW SPARK OF HIGH HEELED BOYS
Traffic
Side A
01. Hidden Treasure
02. The Low Spark Of High Heeled Boys
03. Light Up Or Leave Me Alone
Side B
04. Rock And Roll Stew
05. Many A Mile To Freedom
06. Rainmaker
Producer : Steve Winwood
Engineer : Brian Humphries
Cover Designer : Tony Wright
Musicians : Steve Winwood (vo,g,org,p), Jim Capaldi (vo,perc), Chris Wood (fl,sax), Rick Grech (b,vn), Jim Gordon (dr), Reebop K.Baah (perc)
Recording : Sep.1971 (Island Studio, London)
Release : Nov.1971 (Island ILPS 9180 / UK)
アルバムについて
スティーヴ・ウィンウッド初の単独プロデュースにより前作 "Welcome To The Canteen" からデイヴ・メイスンを除いたメンバーで制作された。第2期トラフィックはコアの3人をベースにアルバムごとにメンバーが入れ替わり、作風もそれぞれに異なった特徴を示している。本作はタイトル曲に代表されるようにメンバー間のインタープレイを重視した長尺な曲が多く、ミディアムテンポのジャズ風な演奏が展開されている。またジム・キャパルディはドラムスからヴォーカルに転向し、全6曲のうち2曲でリードをとっている。立体感を演出した独特の6角形変形ジャケットのデザインは、スティーヴのソロアルバムでもお馴染みのトニー・ライトによるもの。
渋めで長い曲が多く決して親しみやすいとはいえない作風だが、彼らが目指していた多様な音楽要素の融合という点で成功しており、70年代のトラフィックサウンドを代表する1枚といえる。ジャズロックが流行っていたこの時代を反映してか、特にアメリカで好意的に迎えられセールス的にも成功を収めた。この成果はスティーヴ・ウィンウッド自身にとっても予想外だったようで、「ちょうどアメリカのラジオ局がAMからFMへの転換期だったことが功を奏したんだ。僕たちは自分たちが望むがままにレコーディングしただけだから」と語っている(新興のFM局は当時、シングル以外の長い曲も放送していた)。
アルバム発表後にリック・グレッチとジム・ゴードンの二人がバンドを脱退したため、トラフィックはアメリカの有名なセッションスタジオ、マッスル・ショールズのミュージシャンを加え、72年1月にアメリカツアーを開始する。しかしこのツアーの最中にスティーヴ・ウィンウッドは体調不良を訴え、結果的に腹膜炎により生死の狭間をさまようほどの危機に見舞われてしまう。このためトラフィックは一時的な活動の中断を余儀なくされた。一方ジム・キャパルディはそのマッスル・ショールズのミュージシャンを起用して、72年初頭からソロアルバム "Oh How We Danced" のレコーディングに着手している。
収録曲について
Hidden Treasure
(S.Winwood / J.Capaldi) 4:11
クリス・ウッドの愁いを帯びたフルートと、スティーヴ・ウィンウッドのアコースティックギターをメインに配した、幻想的で東洋っぽいメロディーをもつ曲。ジム・キャパルディによるとチベットの死者に関する本から題材を得て作詩したという。
The Low Spark Of High Heeled Boys
(S.Winwood / J.Capaldi) 11:41
アルバムのタイトルトラックでトラフィックの代表作のひとつ。この曲は当初、オランダの映画監督アントニー・コーヤスの "Nevertheless" という作品のサントラ曲(リリースは実現していない)として書かれたらしく、メンバーは70年の冬をモロッコで過ごした際に彼と知り合っている。またタイトルについては、同時期にモロッコで知り合った俳優マイケル・ポラードからアイデアを得たとも言われている。長いタイトルとそこに与えられたメロディーの相性は抜群で、ピアノをメインとしたジャズ風の演奏が11分以上に渡り繰り広げられる。また歌詞は抽象的な表現が多く、レコード会社を批判したものとかグラムロック(特に同じレーベル所属のモット・ザ・フープル)を皮肉ったものなど、いろいろな解釈がなされている。
Light Up Or Leave Me Alone
(J.Capaldi) 4:47
トラフィックにおけるジム・キャパルディの代表単独作でスティーヴのギターをフィーチャーする。ジムがこの時期ドラムを離れたのはテクニックに自信を無くしていたという説もあるが、直後にソロアルバムを制作し自ら歌っていることから、やはりヴォーカルに対する熱意が強かったのだろうと思われる。バンド内でスポークスマン的な役割を兼ねていたジムらしく、物怖じしない力強いヴォーカルを披露している。
Rock And Roll Stew
(R.Grech / J.Gordon) 4:22
新メンバーのリック・グレッチとジム・ゴードンの共作という珍しい曲で、ストリートミュージシャンを題材にしたロックンロール。ヴォーカルはジム・キャパルディが担当している。この曲はアメリカのみでシングルリリースされた。B面は同曲のロング・ヴァージョンで、2002年リリースのリマスターCDのボーナストラックとして収録されている。
Many A Mile To Freedom
(S.Winwood / J.Capaldi) 7:15
ミディアムテンポの長編バラード。長閑な田舎を想起させる牧歌的な作風がこのバンドらしく、トラフィックの数ある曲の中でも「平和」という言葉が最も似合う作品だ。
Rainmaker
(S.Winwood / J.Capaldi) 7:51
トラフィックで唯一リック・グレッチのヴァイオリンをフィーチャーした曲で、本作のハイライトのひとつ。哀愁感のあるスティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルと、クリス・ウッドのフルートが奏でる下降線を辿るメロディが印象的で、リーボップ・クワク・バーのコンガなどパーカッションにもポイントをおいている。穏やかな雰囲気はしだいに曲調を変え、後半はジャズ風に展開して盛り上がりアルバムを締めくくる。

